金継ぎで直したうつわは、飾っておくためだけのものではありません。金の継ぎ目を眺めながら、毎日の食卓で使っていける——それが金継ぎのいちばんの魅力です。ただし、直したうつわには少しだけ「付き合い方」があります。ここでは、当工房で仕上げたうつわを長く美しく使っていただくためのお手入れをまとめました。
金継ぎしたうつわは、ふつうに使えます
結論から言えば、金継ぎしたうつわは日常の食器として問題なく使えます。天然の漆で仕上げる本格金継ぎは、漆が完全に硬化すれば食器として安全な状態になります。実用性を重視したクイック継ぎでも、当工房では食品衛生法に適合した素材を使い、口や食べ物に触れても差し支えないよう仕上げています。
とはいえ、金や漆・樹脂といった仕上げ材は「熱」と「強い摩擦」が苦手です。次の点にだけ気をつけていただくと、継ぎ目の輝きが長持ちします。
やってはいけない5つのこと
1. 電子レンジ・オーブンにかけない
金や銀・プラチナは金属です。電子レンジに入れると火花(スパーク)の原因になり、大変危険です。また漆も樹脂も高温で傷むため、オーブンや直火も避けてください。温めたいときは、うつわに移す前の段階で行うのが安心です。
2. 食器洗浄機(食洗機)は使わない
食洗機は高温のお湯と強い洗剤、そして強い水流がかかります。これが継ぎ目の負担になります。金継ぎしたうつわは手洗いでお願いします。
3. 長時間の「つけ置き」をしない
水やぬるま湯に長くつけたままにすると、継ぎ目に水分が入り込みやすくなります。使ったあとは早めに洗い、水気を拭き取って乾かしてください。
4. 金属たわし・クレンザーでこすらない
研磨力の強いたわしやクレンザーは、金の膜を削ってしまいます。柔らかいスポンジと中性洗剤でやさしく洗うのが基本です。
5. 漂白剤(塩素系)に浸けない
強い薬剤は仕上げ材を傷めます。茶渋などが気になる場合も、金継ぎ部分は漂白剤を避けてください。
洗い方・毎日の扱い方
- 柔らかいスポンジに中性洗剤をつけ、なでるように洗う
- 洗ったら水気を拭き取り、風通しのよいところで乾かす
- 重ねて収納するときは、継ぎ目どうしが強くぶつからないよう、間に布や紙をはさむと安心
- 本格金継ぎのうつわは、油ものや温かい料理にも使えます(レンジ加熱を除く)
金の色は、使うほどに育ちます
金継ぎの継ぎ目は、使い込むうちに角がとれ、少し落ち着いた色合いに変化していきます。これは劣化ではなく、そのうつわだけの景色(けしき)が育っていく過程です。金継ぎが「割れをなかったことにする修理」ではなく「割れた歴史ごと美しくする仕事」と言われるのは、こうした時間の重なりも含めての美しさだからです。
もし継ぎ目がかすれてきたら
長く使ううちに金の光がやわらいだり、ごく一部が薄くなってくることがあります。そんなときは、無理にご自分で触らず、まずはご相談ください。状態を拝見したうえで、お直し・お手入れのご案内ができます【仮:メンテナンス対応の範囲・料金は要確認】。大切に使ってこられたうつわだからこそ、いちばんきれいな状態を保つお手伝いをします。